新着記事 Page 1 2 3 
1 レディジョーカー(上)(下) 高村 薫
毎日新聞社
 正直いって、21世紀に語り継がれる定番かどうかは少々自信がありません。というのは、テーマが「グリコ・森永事件」だからです。小説としての出来は完璧です。最高です。 これまで明らかになっている「グリコ・森永事件」の事実を上手に繋ぎながら、その裏側では本当にこんなことが起こっていたのではないか、と思わせる構成のうまさとディテールの緻密さで、読者を魅了してくれます。
 とにかく、高村作品は、男の生き様のようなものが切々と綴られることが多いのですが、本作品もその例に漏れず、各登場人物がじつに切なく語られていきます。その意味では定番として残してもよいのですが、同時に、「グリコ・森永事件」という20世紀の10大ニュースのひとつといっても過言ではない大事件のディテールを追いかけた部分のほうが、インパクトが強いばかりに、どうしてもそちらに引っ張られてしまいます。だから、21世紀人が読んでも、ちょっとピンとこないかなあ、なんて思います。
2 李歐(りおう) 高村 薫
講談社
 私はこれまでの38年間の人生で、これほど壮大で、切なくて、心に染みる小説を読んだことがありません。文句なしに定番本です。読んでもいないのに文句がある人は、読んでからもう一回、文句をいうべきかどうか考えてください。読んだ人で文句がある人は、BBSに書き込んでください。是非、話し合いましょう。
 この作品は、「わが手に拳銃を」という作品を文庫化する際に加筆修正を加え、もうそれが加筆修正などという生やさしいものではなかったために、ついにタイトルさえも変えて、ほとんど新作として登場した作品です。
 ・・・・・
 ・・・・・
 ・・・・・
 もう、言葉にならない!! とにかく凄い作品です。私の中では、20世紀の日本文壇における最高傑作です。
3 壬生義士伝 浅田 次郎
文藝春秋
 いまのような時代だからこそ、「これは深い!」と感動したのかもしれません。17歳の凶行や、子を殺す親の存在、自分のエゴでゆがんだ愛情を相手にぶつけ続けるストーカーなど。こうした事件がおきるのは、精神的な障害という部分も多分にあるのでしょうが、それ以上に人として生きることの寄る辺が、曖昧模糊としていることからくる、“迷走”の結末のような気もします。
 壬生義士伝の中に語られる主人公の生き様と、その主人公の子供の生き様を見ていると、幕末の混迷する時代の中で、自分なりの“生き様”を貫こうとした人々の潔さが伝わってきます。そこはかとない時代への憤りと、そうした時代の中にあって自分を見失わない生き様の大切さを、主人公の言動の中に垣間見た時、「ああ、すべての生きとし生ける者は、この本を読むべきだ」と思いました。
4 蒼穹の昴 浅田 次郎
講談社
 自分の人生は自分で切り開く。定められた運命などありはしない。そういう理想的な人生感を、これでもかこれでもかと語りつづけた小説です。
 強い執着と不断の努力こそ、幸福な人生を実現するための最大の武器だといわんばかりに、強靭な精神力と不屈の闘志を持った人々が多数登場します。
 主人公は幼少の折、占い師に「おまえは当代随一の富貴を手にするだろう」と予言されます。少年はその予言を信じて、その実現に向け数々の困難に立ち向かいます。
 しかし、実はこの予言はうそでした。本来のこの主人公の運命は「野垂れ死に」だったのですが、それを口にするのがあまりにかわいそうで、 占い師がうそをついたのです。  
 しかし、うその予言は現実のものとなります。主人公は西太后に仕えるようになり、
 やがてその富貴は主人公のものとなります。
 占い師はいいます。「運命を変えることだってできるのだ」と。 でもね、ここでちょっと考え込みました。
 それは、本当にこの主人公は幸せになったのだろうか、ということ。「野垂れ死に」しなかったことはおそらく幸せなことだろう。でも、その過程で彼が失ったものも、計り知れないのではないか。「ああ、生きるということはどういうことなのだろう、幸せとはいったい何なのだろう」 時代は変わっても、やはり人間にとっては、永遠のテーマなのだろうなあ。
新着記事 Page 1 2 3