最初に断言しておきます。筆者は「陰陽師」の大ファンの一人を自認しています。
さて、その前提の上で、この「陰陽師10大裳」ですが、困ってしまいました。陰陽師じゃないんですね。
そもそも陰陽師は夢枕獏さんの原作を、岡野玲子さんが漫画という表現方法で新しい作品に仕上げたことで、人気を博したわけです。いってみれば、面白い小説をTVドラマ化したようなものなんですね。原作は面白いのに、TVドラマにしてみたら、つまらなかったということは往々にしてあります。しかし、岡野玲子さんは凄かった。原作の魅力を損なうことなく、独自の解釈もあったりして、原作以上に面白くなっていた(個人的には原作のほうが圧倒的に好きですが)。そこで、この漫画版「陰陽師」が爆発的(たぶん、一般的な「爆発的」というニュアンスからすると、きっと程遠い)にヒットして、新しいファンを獲得し、小説も漫画も、そして陰陽師関連本もブレイクしたわけです。いってみれば、TVドラマ化した際に、キャストもよく、脚本もよかったので、新たなファンがついたようなものですね。
ところがです。夢枕獏は、陰陽師の続編を書いていない。しかし、岡野玲子の「陰陽師」は発刊されている。まあ、前作「陰陽師9玄武」くらいまでは、比較的原作ありきのスタンスが守られていたのですが、このシリーズ10作目に至っては、もう全然、お話の中身が「陰陽師」ではないんです。
はっきりいうと、「意味がわからない」内容です。おそらく、岡野玲子が自分で編み出したストーリーなのでしょうけど、「何の話をしているのだ!!!!」とびっくりマークを5個くらいつけたくなるほど、意味不明の内容です。
実は、このfunny-eの「ブックシェルフ」の中にも、夢枕獏の「陰陽師」を取り上げていて、そこでも触れているのですが、獏さんの陰陽師の場合、「男女の愛憎劇をベースにした、極めて単純なストーリー展開をする、奥深い含蓄のあるお化け小説」という点に、面白さの源泉があるというのが、筆者の見解です。その意味でいくと、この10作目は、男女の愛憎はそれほど主流ではないし、ストーリー展開は難解だし、奥深い含蓄があるのかないのか不明だし、“お化け小説”でもなさそうだし(お化けは登場するけど)、うーん、どうしちゃったんだろう、という感じです。
あくまでも、夢枕獏の陰陽師は岡野玲子にとってのインスピレーションの原点であって、作品はあくまでも岡野作品であって、獏さんのそれとは別物だ、という解釈でも構わないのですが、「だったら最初からそうしろよ」という気もして、つまり最初は忠実だったわけではないですか、原作に。それで受け入れられたのだから、ここへきて脚本家を変えちゃうのはどうかなあ、って感じです。別に脚本家が変わったわけではないが、そのくらい全然違う作品になっているということです。
陰陽師は好きだし、第9作目までは、このシリーズのファンでもあったので、あまりキツイことは書きたくないですが、はっきりいえば、つまらなかったです。あと2タイトル、続編が続くはずですが、こんな調子じゃ、買おうという気にもなりません。
たぶん、反論のある人。多いんだろうな。 |